私たちは“濃度”に囚われすぎていないか
酸素療法を考えるとき、私たちはつい「何%で投与するか」「SpO₂はいくつか」という
**濃度(FiO₂)**に目を向けがちです。しかし、呼吸管理にはもう一つの決定的な要素があります。
それが**流量(Flow)**です。
高流量酸素療法とは、単に酸素を大量に流す治療ではありません。
それは、
「患者の吸気の勢いを、供給Flowが上回れているか」
という関係性の問題なのです。
30L/minという数字の正体
教科書では、30L/min以上を「高流量システム」と定義します。
これは、安静な成人の吸気流量がおよそ30L/min前後であることに基づいています。しかし、目の前の患者はどうでしょうか。
呼吸数が増え、
吸気が短縮し、
努力性呼吸がみられる。
その吸気流量は、本当に30L/minでしょうか。
吸気流量は「状況」で変わる
吸気流量は一定ではありません。 例えば、1回換気量500mLの患者さんを想像してください。
- 落ち着いている時:吸気時間が1.0秒なら、流量は30L/min。
- 苦しい時:必死に吸おうとして吸気時間が0.5秒になれば、流量は60L/min。
同じ量を吸っていても、時間が短くなればFlowは増大します。
呼吸が速い。
吸気が短い。
それは、患者がより大きなFlowを必要としているサインです。
| 状態 | 吸気流量の目安 | 本当に高流量? |
|---|---|---|
| 健常安静 | 約30L/分 | ほぼ同等 |
| 軽度呼吸困難 | 40〜50L/分 | 不十分かも |
| 強い努力呼吸 | 60L以上 | 明らかに不足 |
低流量酸素で起きていること
患者の吸気流量 ────────────────▶
低流量酸素 ──▶
HFNC(適切) ─────────────────▶
HFNC(不足) ─────────▶
鼻カニュラで4L/min投与しているとします。
もし患者の吸気流量が60L/minであれば、不足分は室内気によって補われます。
その結果、設定FiO₂と実効FiO₂の間に差が生じます。Flowが足りなければ、濃度は安定しません。
高流量酸素療法とは、患者の吸気流量を「上回る」Flowを供給することで、外気の混入をシャットアウトし、FiO₂の安定をFlowで担保する構造なのです。
みなみ高流量デバイスを使っているのにSpO₂が上がらないなぁ。



そんなときは、設定濃度を疑う前に、
設定Flowが患者の吸気流量に負けていないか
を考えてみてください。
高流量とは“絶対値”ではなく“関係”
30L/minという数字は目安に過ぎません。呼吸数28回/分鼻カニュラ4L/minSpO₂ 91%
この患者にとって、4L/minは十分でしょうか。
高流量とは、装置の数字ではなく、患者の吸気流量との関係で決まる概念です。








