はじめに:その10L、本当に「足りて」いますか?
酸素療法の指示を見て、「とりあえず流量を上げれば安心」と思っていませんか?
実は、現場で起きる「酸素は行っているのに、なぜか苦しそう」という違和感の正体は、デバイスのスペックではなく**「考え方のズレ」**にあります。
みなみ「たくさん酸素を流せば高流量、というわけじゃないんだ。今日は、明日からの観察がガラッと変わる『思考の切り替え』を伝えたいと思います!」
1. 「補う」低流量と「支える」高流量
「低流量」と「高流量」という言葉。これ、単に流れる酸素の量の話ではありません。
本質的な違いは、患者さんの吸気に追いついているかどうかです。
低流量システムの考え方:不足分を補う(セルフサービス)
- 考え方:患者さんの吸う力は十分。足りない酸素濃度だけを横から足してあげる。
- 状態:酸素を流していても、足りない分は周りの空気(21%)を一緒に吸い込んでいる。FiO2は一定にならない。
- キーワード:「患者の呼吸に合わせている」
高流量システムの考え方:呼吸を支える(フルサービス)
- 考え方:吸う力自体が弱っている、あるいは足りない。機械が患者さんの吸う勢い以上のガスを送り込み、呼吸仕事量を軽減する。
- 状態:ほぼ設定通りの濃度(FiO2)をそのまま吸える。
- キーワード:「呼吸そのものを支える」
2. 【警告】SpO2が「98%」なら安心、という罠
ここが一番伝えたいポイントです。
SpO2はあくまで「結果」であり、そこに至るまでの「プロセス(努力)」は映し出しません。
「数字はいいのに、患者さんは必死」という状態を見逃さないで!
- パターンA(低流量):SpO2 98%。でも呼吸回数30回、肩呼吸で必死に維持。→ これは「患者さんの頑張り」で維持している数字。呼吸仕事量の増加している状態。いつか力尽きます。
- パターンB(高流量):SpO2 98%。呼吸はゆったり、表情も穏やか。→ これが「デバイスが呼吸を支えている」理想的な状態。



「数字だけじゃなく、患者さんの『胸の動き』や『表情』を見る。
それが観察のポイント!
呼吸仕事量ってなに?
呼吸仕事量とは、
**「呼吸するために、どれだけ体が頑張っているか」**のことです。
私たちは普段、呼吸を“無意識”でしています。でも酸素が足りない状態では、体は無理をして呼吸を続けます。
- 呼吸回数が増える
- 肩や首の筋肉を使う
- 息を吸うたびに疲れる
これらはすべて呼吸仕事量が増えているサインです。
なぜ呼吸仕事量が大事なの?
SpO₂は「血液中の酸素飽和度」を見ていますが、**呼吸仕事量は“患者さんのしんどさ”**を表します。
たとえば、
- SpO₂は95%ある
- でも呼吸数は30回/分
- 会話がつらそう
この状態は「酸素は足りているけど、呼吸が楽ではない」ということ。
👉
ここで高流量酸素療法を考える理由は、
酸素濃度を上げるためではなく、
呼吸を楽にするためです。
3. 考え方を切り替える「進言」のタイミング
低流量で粘るべきか、高流量を提案すべきか。迷った時の判断基準を整理しました。
| 項目 | 低流量でOK(補う段階) | 高流量を検討(支える段階) |
| 呼吸数 | 12〜20回 /分(安定) | 25回以上(頻呼吸) |
| 呼吸パターン | 腹式・胸式でゆったり | 肩呼吸、鼻翼呼吸、陥没呼吸 |
| 会話 | スムーズに話せる | 途切れ途切れ、一言が精一杯 |
| デバイスの反応 | 流量を上げれば落ち着く | 流量を上げても努力感が変わらない |



酸素療法は、単に「酸素というガスを入れること」ではありません。
本当の目的は、**「患者さんの呼吸の負担を減らし、心臓や体力を守ること」**だと思っています。



「指示通りだから」で終わらせず、
「このデバイスで、この人の呼吸はラクになっているかな?」
という視点を持つだけで、あなたの看護の質は劇的に変わります。
まずはここから!
マスク6L酸素で、呼吸も表情も穏やか。SpO2を見ると100%。
こんな時は医師に「呼吸も落ち着いていて、SPO2も100%です。酸素下げていきますか?」「経鼻酸素に変えてみますか?」って提案してみましょう。
きっと医師から「いきなり経鼻は怖いかな」「30分で酸素1L下げて様子みようか。」とか次の指示が来ると思います。



これって酸素療法の基礎を使った医師への提案。立派なチーム医療のスタートだよ!
まとめ:考え方の違いを理解して一歩先のケアへ
- 低流量は、元気な呼吸に酸素を「ちょい足し」するもの。
- 高流量は、疲れた呼吸を「丸ごと支える」もの。
次回は、次回は、
**低流量と高流量を“もう一段深く”**掘り下げます。
・低流量酸素療法の限界
・高流量酸素療法(HFNC)は何がすごいのか「なぜHFNCを提案するのか?」
を、現場目線で整理していきます。









