その「呼吸の喧嘩」、一括りにしていませんか?
患者さんが呼吸器と合わずに苦しそうにしている時、つい「ファイティングが起きています!」と一言で報告していませんか?
新人看護師呼吸器と喧嘩してるからファイティング…。とりあえず鎮静を足せばいいんですよね?



ちょっと待って! 実は現場でよく使われる『バッキング』と『ファイティング』は、全く別物なんだ。ここを整理するだけで、アセスメントの質がガラッと変わるよ。
① 似て非なるもの!「バッキング」vs「ファイティング」
まずは言葉の定義をスッキリさせましょう。ここを間違えると、対策も間違えてしまいます。
- バッキング(Bucking):
- 状態: 吸おうとしている時に、患者さんが**「咳き込む」「吐き出そうとする」**こと。
- イメージ: 異物感(痰やチューブ)に対する防御反応。
- 対策: 吸引やチューブの固定確認、鎮痛・鎮静の調整。
- ファイティング(Fighting):
- 状態: 呼吸器の送気リズムと、患者さんの吸いたいタイミングが**「ズレる」**こと。
- イメージ: 「もっと吸いたいのに終わった」「まだ吸いたくないのに空気が来た」。
- 対策: 設定(流速・吸気時間・トリガー)の調整。



つまり、設定が合っていないのが『ファイティング』。これを全部鎮静で解決しようとすると、自発呼吸を潰して離脱を遅らせることになっちゃうんだ。
② 現場で絶対に見抜きたい「3大同期不全」
最新の知見では「同期不全(ディスシンクロニー)」と呼ばれ、死亡率にも関わる重要なサインです。
1. ダブルトリガー(1回の努力で2回送気)
- 波形: 階段のように連続して2回送気される。
- 原因: 設定した吸気時間が短すぎる。
- リスク: 1回換気量が2倍になり、肺を傷つける(P-SILI)リスクが激増!


自らの呼吸が肺を傷つけるP-SILIについてはこちらで解説してます。


2. フロー・スターベーション(流量不足)
- 波形: 圧波形が吸気中に「グニャッ」と凹む。
- 原因: 患者さんの吸いたい勢いに対して、空気の流量(フロー)が足りない。
- 解決: 流速を上げるか、PC(圧規定)への変更を検討。


量規定換気と圧規定換気についてはこちら。


3. ミストリガー(吸いたいのに始まらない)
- 波形: 圧波形は下がっているのに、送気が始まらない。
- 原因: オートPEEPの貯留(肺の中の圧がPEEPより高くなってしまう)や、トリガー感度が鈍すぎる。


③ 解決のステップ:鎮静の前に「設定」を診る



同期不全は、患者さんの『もっとこうしたい!』という心の声。まずは設定を患者さんに寄せていこう。
- トリガー感度の調整: 少ない力でも吸えるように。
- 吸気時間・流速の調整: 患者さんの呼吸サイクルに合わせる。
- モードの検討: 自発呼吸を活かせるPS(プレッシャーサポート)などへ。
④ 【未来】AIが同期不全を見抜く時代へ
最新の研究では、AIを使ってこれらの複雑な波形の乱れをリアルタイムで検知する技術(AI-based detection)の開発が進んでいます。



難しいことはAIが考えてくれるんですね!



将来はアラームが鳴る前に、AIが『今、ダブルトリガーが起きています。設定を変更してください』と教えてくれるようになるかもしれない。でも、最終的にその設定が本当に患者さんの安楽に繋がっているかを確認するのは、ベッドサイドにいる『あなた』の目なんだ。
機械が賢くなればなるほど、私たちは「波形の裏にある患者さんの苦しみ」を読み解く感度を磨いておきたいですね。
まとめ:波形は患者さんとの対話



「同期不全に気づけるようになると、呼吸器管理が『作業』から『対話』に変わるよ。」
「ただのファイティング」で片付けず、何がズレているのかを言語化して、医師やCEに相談してみましょう。
📚 参考文献・エビデンス
- Patient-Ventilator Asynchrony (PVA) and Outcomes
- Double Triggering and Lung Injury (P-SILI)
- AI-based detection of patient-ventilator asynchrony: Current standing and future





