【人工呼吸器】etCO2が45なのに「換気回数を増やさない」理由。設定の裏に隠れた3つの戦略

【人工呼吸器】etCO2が45なのに「換気回数を増やさない」理由。設定の裏に隠れた3つの戦略
目次

モニターの数字に振り回されないで

新人ちゃん

みなみ先輩!AさんのetCO2が45もあるんですよね。でも呼吸回数の設定はたったの9回……これ、設定間違ってるのかな? もっと回数を増やしてCO2を吐かせたほうがいいんじゃ……?

みなみ

確かに肺のことだけ考えれば、回数を増やすのが正解だね。でも、極論を言えば、CO2が少しくらい溜まっても死なない。でも、脳や離脱のチャンスを逃すと取り返しがつかないんだ。 先生やRSTが狙ってやっている『意図』、考えてみようか。」


② 理由その1:脳を守る「血流のリモコン」

脳外科疾患の急性期では、呼吸器は「脳の血管の太さを変えるリモコン」になります。

  • あえて「溜める」戦略(高CO2管理):
    • ターゲット: 脳梗塞、血管攣縮(スパズム)
    • 狙い: CO2は血管を広げる。詰まりかけた血管を広げて、少しでも脳に血を届けたい。
  • あえて「吐かせる」戦略(低CO2管理):
    • ターゲット: 脳出血、重症頭部外傷(脳圧パンパンな時)
    • 狙い: CO2を下げて血管を絞る。脳内の血液ボリュームを減らして、脳圧を下げる。

③ 理由その2:呼吸中枢への「呼びかけ」

RSTがラウンドで設定を考える時、あえてCO2を溜めることがあります。それは**「離脱への一歩」**を踏み出すためです。

みなみ

ずっと機械に任せきり(強制換気)だと、脳がサボり始めちゃう。そこで、あえてetCO2を高めに維持することで、脳にある呼吸中枢を刺激して『おい、自分で息をしろ!』とスイッチを入れるんだ。これが自発呼吸を引き出す「呼吸管理」のひとつだよ。


④ 理由その3:肺を守る「許容性高二酸化炭素血症」

以前少し触れたけど、肺そのものがボロボロの時(ARDSなど)、無理にCO2を吐かせようとして強い圧をかけると、肺が破れてしまいます。

  • 狙い: 肺を壊さない程度の「優しい圧」を優先し、CO2が溜まるのは目をつむる(=Permissive Hypercapnia)。

まとめ:全体像を見ることが大事

みなみ

昔、とある先生に教わったんだ。『肺が悪くなっても人工呼吸器がある。でも脳の代わりはないんだ』って。
設定がおかしい!と思う前に、まず患者さんの『今、最優先で守るべきもの』をチェックしよう。

新人ちゃん

つまり状態や考え方で「優先する事」が違うから、当然設定も変わってくるってことですね。
難しいなぁー。

  • 脳に血を送りたいのか?
  • 眠っている呼吸中枢を叩き起こしたいのか?

これを知るだけで、etCO2の見え方がガラッと変わる。不安なら『今回は自発を促すために、あえて高め設定ですか?』って聞いてごらん。その一言で、チームの信頼は爆上がりだよ!

もっと詳しく知りたい人への参考文献

  • 『脳卒中治療ガイドライン 2021』
  • 『ARDS診療ガイドライン 2021』
  • ジョン・ウエスト著『ウエスト呼吸生理学入門』
  • 医学書院『呼吸と循環』バックナンバー(Permissive hypercapnia特集)
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

現場で働く臨床工学技士(CE)13年目。3学会合同呼吸療法認定士を取得しています。
看護師さんから
「これってどういうこと?」
と聞かれる瞬間が、実は一番うれしかったりします。

自分がつまずいたこと、失敗したこと、そして「難しい」と感じたポイントを中心に、現場で本当に役立つエッセンスだけを凝縮して解説しています。
趣味はロードバイクとスノーボード、そしてブログ執筆。
このブログが、
「今さら聞けない」を整理するきっかけになればうれしいです。

目次